コープこうべの平和・国際活動

生活協同組合コープこうべ

PHDスタディツアー

日本とアジア・南太平洋地域の草の根の人々との交流を通して、平和と健康を担う人づくりをめざす、公益財団法人PHD協会のスタディツアーに、コープこうべから小西陽一さんが参加しました。このツアーでは、PHD研修生の現場の活動を訪ねて、国際協力や開発、私たちの暮らしのあり方を考えるとともに、現地で研修を担当し、生協の考え方や仕組みを伝えることなどを目的としています。

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1、私とネパール
今回のネパール訪問は2回目でした。1度目は7年前に個人旅行でトレッキングを目的に訪れました。その時印象に残っているのは、現地ガイドの青年が言った『ネパールでは仕事がなくてみんな困っています。僕は日本語が話せるからガイドの仕事があってとても幸せです。』という言葉でした。
就職してまだ日が浅く、自分の選んだ道が正しかったのかどうか悩んでいた当時の私にとって、彼の言葉はとても衝撃的で、働くことが保障されている今の環境に不満を抱いていたことに、後ろめたさを感じ、帰国後は意識を変えて仕事に打ち込むようになりました。

2、2度目のネパールの印象
カトマンズは人口が増え活気が増し、着実に経済発展していることがわかりましたが、以前に増して車とバイクの数が増え、1日で喉が痛くなるほど大気汚染も進んでいました。乾季にはカトマンズ在住のネパール人もマスクが手放せないとのことでした。

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ポカラの街にいた野良犬ならぬ『野良牛』
現地の人の話では自分の飼い主の家はちゃんと覚えているらしい・・・

また、今回はこれまで知らなかった側面も見えてきました。
1つ目は村落からの人の流出です。ネパールの農業は、自らが生活していくための手段という性格が強いようで、そのため家族がある男性はインドなど近隣諸国へ出稼ぎに出かけたり、きちんと教育を受けた若者たちが仕事を求めて都市へ移住するケースが増えています。
2つ目はゴミの問題です。カトマンズの街を車で走っていると、ゴミがうず高く積まれているのを目にします。放置されたゴミは増える一方です。またバクタプルにある岩村記念病院の近くの河底には、使用済みの医療器具も捨てられていました。経済問題とこれら保健衛生や都市のインフラ整備については表裏一体の問題として捉える必要があると感じました。

3、協同組合の講義について
今回のスタディツアーで私は、生協職員として現地の方々に協同組合についての講義をすることになっていました。講義のテーマは現地の組合で行っている、肥料の協同購入から一歩進めて、栽培と販売も一緒にやってみてはという提案から始めることにしました。

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村の人たちは、わずかに換金作物を作ってはいますが、村人それぞれに栽培する作物の得意、不得意があると聞きました。まずはみんなで換金作物の栽培が得意な組合員を選出し、他の組合員は得意な人を手伝うことを勧めました。そうすることで栽培のノウハウが組合のメンバー全員に行きわたると考えたのです。

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ギャン・パドゥールさんの自宅兼組合事務所にて 講義の評判は上々(!?)でしたが、通訳のサラさんが現地の人の実情にあった意訳をしてくれたおかげと感謝しています。図書館で調べたネパール語もウケた要因かも・・・

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サム・セワ・サマハの集会所にて

pic_phd201206_06.jpg講義で使った模造紙
真ん中辺りに書いてあるのが『一人は万人のために 万人は一人のために』

次に協同栽培と販売について、組合員全員で一人ひとりの役割について話し合うことを勧めました。そうすることでメンバー全員が組合の事業活動に参加している意識を持ってほしいと考えました。
3つ目は組合員のモチベーションを高めることです。事業を発展させ組合の資本金を増やしていくことで、農機具も安価で購入出来るようになり、更には都市に買い手を求めトラックを借りて輸送することが可能になるかもしれないと話しました。

ただし、事業規模を拡大していくことが協同組合の目的ではなく、組合運営については組合員全員で話し合って決めること、組合員同士がお互い助け合うことを強調しました。最後はコープこうべ設立の経緯とその後の発展について簡単に述べ、『一人は万人のため、万人は一人のために』をネパール語で翻訳して紹介し講義を締めくくりました。

4、講義を終えてわかった課題
今回のスタディーツアーで合計3回講義する機会に恵まれたのですが、それらを終え参加者の質問や感想を聞く中で見えてきた課題があります。
1つ目は協同栽培した作物の相場が大幅に変動したときの対応策です。今年トマトの価格が1kgあたり5ルピー(日本円で7円弱)と大幅に下落し、収穫量の大部分を廃棄したとのことでした。農業を事業として根付かせるにはこのような事態を乗り切るための対策が必要です。
2つ目は社会的背景についてです。ネパールでは男尊女卑の風潮があり、特に男性の年長者の意見に大きな影響力があります。今回の講義の出席者も男性がほとんどでした。今後は、性別・年齢を越えて組合員全員の意見が反映される運営が必要だと思いました。
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3つ目は政治的背景についてです。ネパールではコミュニスト(共産主義系)の考え方を持っている家と、コングレス(保守主義系)考えを持っている家に大別され、両者の溝は深く、政治的色合いのない協同栽培についてもコミュニストの家とコングレスの家が協力して栽培することは現状では難しいとのことでした。

5、人生を豊かにするということ
今回、スタディツアーに参加して、故・岩村先生が言われた『自分の持っている10%を提供する』ことの本当の意味が分かったような気がしました。それは所有財産、時間、労力といったハード面だけではなく、自分の持っている人脈、知識、アイデア、といったソフト面も指しているのではないかということです。  
そしてそれらハード、ソフト両面を可能な限り提供することで人に感謝され、そのことで自身の人生が豊かになるということを言いたかったのではないでしょうか。人は1人では生きて行く事はできません。自然や社会全体に生かされていることに感謝し、自分自身も感謝される人間であることが、人生を分かち合うことではないかと思います。

(財)PHD協会

Peace(平和)、Health(健康)、Human Development(人づくり)の頭文字をとって名づけられた草の根の人々による国際交流・協力の活動をしている団体です。
日本とアジア・南太平洋地域との交流を通して、平和と健康を担う人づくりをすすめ、共に生きる社会をめざしています。コープこうべはこの趣旨に賛同し、支援しています。http://www.phd-kobe.org/